テスト・今日の記事

日本の新総理「菅総理」はアトキンソン信者として有名。

信者がいるリーダーは、信者の考え方に強い影響を受けるので、信者はどんな人でどんな考えを持っているのか分析する事が重要です。

「キーマンの思考を知る→キーマンクローズのコツ」

アトキンソンさんの記事を↓↓ とても頭のシャープな人で本質を見抜く力がある。

大阪出張の帰路、余裕があったので京都に寄った。十年ぶりに東山界隈を散策し「産寧坂をのんびり歩き、お香屋さんを冷やかした後は湯豆腐でも…」という目論見。祇園四条駅を降りて清水に向かう道に踏み入れた私の前に、目を疑う光景が広がっていた。まるでラッシュアワー新宿駅のように道を埋め尽くす人、人、人。道の両側の店を冷やかすのはおろか、歩くことさえままならない。ああ、これがインバウンド政策の威力か、と、圧倒されるばかり。見慣れた京都がまるで別の町のように見える。

マナー違反が目立つだとか”観光公害”が深刻だ、など、一般レベルでは批判的に語られることも多い外国人観光客の急増。だが、日本経済を建て直すためには、これでもまだまだ不足なのだということが、今日のデービッド・アトキンソン氏の講演で分かった。

茶道を究め神社仏閣を守る英国人

アトキンソン氏はイギリス生まれ。オックスフォード大学で日本学を修めた後、ゴールドマン・サックス証券でアナリストとして鳴らし、取締役や共同出資者にまで上り詰めたものの「マネーゲームを達観するに至って」退社。国宝・重要文化財の補修を手がけて382年という小西美術工藝社の社長と別荘がお隣同士だったご縁で誘われて、同社の取締役に就任。今では代表取締役社長を務めるという異色な経歴の人物だ。

アナリスト時代に裏千家に入門し、十数年前にはかなり位の高い茶名を授けられたほどで、生半可な日本人よりもずっと日本文化への造詣が深い。だからこそ小西美術工藝社に誘われた際も、その意義はよく理解できた。大社や神宮など最上位クラスの神社仏閣のうち80%が同社の顧客であるという、押しも押されもせぬ文化財補修業界のガリバー企業だ。だが、就任してから蓋を開けてみると倒産寸前の大赤字だった。

顧客である神社仏閣自身は「文化財は守られるべき物で一般の人は排除すべき」という姿勢であることに加え、地方は人口減で氏子や信者が減ってしまい、経済的に立ちゆかなくなっている。

政府は文化財補助金をほとんど出さない。社会保障予算がどんどん増える中で文化は国民にとって必須じゃないからだという。財務省自民党に掛け合ってみたものの「経済合理性のある戦略がないと補助金は増やせない」と言われ、「それなら文化財観光で日本経済に貢献すれば、補助金は費用ではなく投資になる」と説いて回った。

ほどなくそれが国策となってしまったので、アトキンソン氏自身もびっくりしたという。

人口減少が経済を破壊する

「失われた30年」、様々な経済政策が打ち出されるがどれも奏功しない。高度成長からバブルに至る時代の高揚感がまだ記憶にある我々は日本の再興を夢想するが、実態はのっぴきならない所まで来ている。

「高度成長の主因は、技術力・勤勉性・教育水準の高さ、などとよく言われるが全く違う。単に第2次大戦で激減していた人口が急増しただけ。現在でも世界のGDPランキングを見るとそっくり人口の順番です」

日本経済停滞の最大原因はひとえに人口減少問題にある。「なのに日本人は『先進国なんてどこも同じでしょ?』などと、のほほんとしている」という。大間違いだ。ほとんどの先進国は人口を増やしており、人口減少に見舞われているのは日本以外ではドイツ・イタリア・スペインだけ。それでもこの3国の減少率は7~8%に過ぎない。日本の減少率は遥かに深刻。2060年までに総人口の31.5%が減り、生産年齢人口に至っては42.5%も減少する。こんな国は地球上どこを探してもないのだという。どうすればいいのか。

「いなくなる日本人の代わりに消費してくれる人を外国から呼べばいい。バックパッカーのような人をいくら呼んでもダメ。短期間で帰ってしまう近隣の国の人もダメ。遠くの国から富裕層を呼んで長く滞在してもらうのです」。

「おもてなし」など動機にならない

経済が停滞し続ける今、輸出を増やして外貨を稼ぐしかないが、日本の産品の輸出は頭打ちだ。ただし外貨を国内で消費してもらう外国人の観光は輸出と同じこと。外国人観光客が切り札となるのだ。

1990年には4億人だった世界の観光客数は2017年には13.2億人にまで伸びた。現在観光産業が世界経済の中に占める割合は、化学製品、燃料に次いで、第3位。全世界のGDPの10%、全世界の雇用の1/10を占め、観光輸出の総計は1.4兆ドル、これは世界の輸出の7%にもなる数字だ。日本人がのほほんとしている間に、世界では観光産業がここまで重要になってきている。

こうした観光産業の波に日本はここ20年乗れずに来たが、2017年にはやっと観光収入が世界の10位にまでキャッチアップしてきた。だがここに来て政府の言っていることはズレている。日本観光の売り物は(1)おもてなし (2)治安 (3)新幹線の正確さ だというのだ。これらは確かに日本の特徴ではある。しかし”観光動機”にはなり得ない。良い例がフランスだ。世界一無愛想な国と言われるフランスは人口が6500万人。そこへ世界トップの8400万人の観光客を集めている。この一例からも分かるように「おもてなし」などは観光動機にはならない。

治安も同様だ。「日本で財布を落とすと41%がそのまま戻ってくるという警察庁の調査があるが、ヨーロッパから14時間と20万円の運賃、滞在費25万円もかけて、財布が無事戻って来るかどうか試したい人などいない」

「新幹線が正確?観光客は休みを取って来ていて暇だから、少々遅れようが気にならない」などと、次々とsense of humorで会場を沸かせるアトキンソン氏。

魅力は「あり・なし」ではなく作る物

世界中の観光学論文を読んでアトキンソン氏が導き出した結論は、観光動機となるのは「自然」「気候」「文化」「食事」の4点だけ。中でも自然と気候が重要だ。8400万人を集めるフランスと3500万人しか呼べないドイツ。何が違うかというとフランスには北のスキーリゾートも南のビーチリゾートもある。ドイツは山が低くてスキーができないし、海は北にしかなくビーチは冷たい。いろいろな自然の揃った国が観光には有利なのだ。

「文化はそこまで重要ではない。観光収入がダントツ1位のアメリカに文化は何もない」真顔で織り交ぜられる軽妙な皮肉にまたも会場が沸く。

その点、日本は北から南まで3000キロ、高い山もビーチもある、雪が降る、島もある。生物の多様性では世界有数だ。こんなに観光資源に恵まれているのに、日本人は「文化押し」をしすぎる。例えば茶道のように約束事の多いものは日本人でさえ興味ないのに、なぜ外国人に勧めるのか。和食は日本人ですら1日1回なのに、なぜ外国人に毎食勧めるのか。日本の魅力=日本的な物と誤解している。

観光はCustomer experienceが全て。その向上に向けて、アクティビティはあるか、外国人が興味の持てる解説案内はあるか、座るベンチ等はあるか、カフェや食事場所はあるか、宿泊施設はあるか、などを検討し、整備しなくてはならない。

「観光は整備だ。整備さえすればSNSで勝手に発信してもらえる時代。そこに魅力があるかないかではなく、魅力を作るのです」

中でも日本には五つ星ホテルが足りない。「五つ星ホテルの数と観光収入とには91.1%相関がある」という。アメリカ755軒、イタリア176軒、フランス125軒、メキシコ93軒、インドネシア57軒(うちバリ島42軒)。これが各国の五つ星ホテルの数だが日本はわずか28軒、うち18軒が東京だという(2016年)。五つ星ホテルというのは小規模だから建築コストも低い。三つ星ホテルとの違いは設備ではなく人材だ。例えば清掃スタッフであっても、何を尋ねても即座に答えられるように訓練されている。どんな特殊な希望も叶えて見せるオペレーションが提供される。こうした五つ星ホテルに欧米の富裕層が長期滞在することで観光収入が上がるのだ。

アトキンソン氏は繰り返し「観光客は暇だから暇つぶしをさせてあげること」と言う。考えてみれば日本人の観光旅行はまるでスタンプラリーのように名所をせかせか駆けずり回るのが常だ。その発想から脱却し、優雅な暇つぶしのできる場所を作れば、輸出と同等の外貨が稼げるというのだ。アトキンソン氏は「私は外国人観光客は札束にしか見えない」と言う。

“年金100年安心”だったはずが老後2000万は自力で用意せよと言われ不安を募らせる前に、1日でも早く世界の観光産業レベルに追いつくことが得策だろう。